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「コロナ禍」のラテンアメリカ

◎国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)の3つの報告書

 2020年4月から5月にかけて、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会が3つの報告書を公表しました。新型コロナウイルス感染拡大のラテンアメリカ・カリブ地域の社会・経済への影響を分析・評価し、「コロナ後」の世界において進めるべき政策の基本軸についての提言をまとめています。

 3つの報告書は以下のとおりです。
①4月3日「COVID-19パンデミックに直面するラテンアメリカ・カリブ地域:社会経済的影響」
②4月21日「経済の立ち直りを考えるためにCOVID-19の影響を評価する」
③5月12日「COVID-19時代の社会的課題」

 ①と②では主にパンデミックによる同地域へのマクロ経済面への影響を分析しています。③では現在の経済活動の停滞が、とりわけ貧困層・極貧層、そして低所得層など社会的に脆弱な立場におかれた人々の所得の減少、格差の拡大という形で重くのしかかっている現状を明らかにしています。そして中長期的に「新型コロナウイルスとの共存」が想定される世界で、一時的な政策だけでなく、この新しい社会的現実に対応する政策として「緊急ベーシックインカム」へ向けた提言を打ち出しています。

(1)新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響について

 パンデミックが到来した時、ラテンアメリカ・カリブ地域の経済状況は、直近6年間(2014~19年)のGDP成長率が平均で0・4%と、あまり良好な状態ではありませんでした。パンデミック前の経済予測では、今年の経済成長率は最大で1・3%と評価されていました。ところが、この危機的状況の中で、CEPALは今年の地域の経済成長率を平均-5・3%と予測しています。この数字は、1930年の大不況時(-5%)よりも悪く、歴史的に見て最も悪くなる可能性を指摘しています。

 この経済の落ち込みは以下の5つの要素に起因すると指摘しています。
①主要な貿易相手国の経済活動の縮小
②一次産品価格の下落
③グローバル・バリューチェーンの中断
④観光サービスの需要減
⑤リスク忌避の強化と世界的な財政状況の悪化

 CEPALが「歴史的に先例のない事態」と評価しているように、「コロナ禍」のラテンアメリカ・カリブ地域の社会は、これまでにない公衆衛生的、経済的、社会的危機といった複合的な危機に直面しています。