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INTRODUCTION NPT
 NPT(核不拡散条約)は六八年に署名され、七〇年に発効した条約であり、二〇〇二年十一月現在、一八八ヶ国が加盟しています。日本は七〇年に署名し七六年に批准しました。
 前文と本文十一条からなるNPTは、米・ロ・英・仏・中の五ヶ国のみを核兵器国として核兵器の保有・開発を認め、それ以外の国への核兵器の拡散を防止することを目的としています。そのため、非核兵器国にはIAEA(国際原子力機関)による査察を含む保障措置の受諾義務があります。そして非核兵器国には「原子力の平和利用」の権利が保障され、また核兵器国には「核軍縮交渉を行なう」ことが義務づけられています。
 しかし歴史を見れば明らかなように、米国と旧ソ連は地球を破滅に導く核軍拡競争を続けました。今でも米・ロ両国はそれぞれ一万発以上もの核弾頭を保有しています。つまり、NPTは核兵器国が一方的に核軍事力を増強する不平等な体制となってきたのです。
 NPTはもともと有効期限が二五年とされていたため、九五年に再検討・延長会議が開催され、条約の「無期限延長」が決められました。その際に「再検討プロセスの強化」と、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を含む「核軍縮の原則」が決められたのも、核兵器国に対する非核国の強い不信があったからです。
 現在では、核軍縮に消極的な核兵器国に対して、ブラジルや南アフリカなどが新アジェンダ連合(NAC)を結成し(九八年)、核兵器廃絶に向けて現実的な核軍縮をすぐに実行するよう強く求めるようになっています。
 核不拡散は、核軍縮のための必要条件ではあるが十分条件ではありません。また核軍縮のための手段にはなりえても、それ自身は差別的な制度であり目的とはなりえないものです。今年五月には二〇〇五年の再検討会議に向けた第二回準備委員会がジュネーブで開かれましたが、今後核軍縮から核兵器廃絶に向けての一層の努力と具体的な成果が必要とされています。
(編集員 谷野 隆)