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街角レポート1 靖国神社「みたままつり」
 本年(二〇〇四年)七月一六日、私は東京・九段下の靖国神社参道にいた。
 例年の「全国政教分離訴訟全国交流集会」が、今年は東京で開催。「それならば『みたままつり』を是非見てほしい」という東京事務局の計らいで、そのまつりの最終日であるこの日と翌日に集会が企画されたのであった。
 参道は出店と繰り出した人々で溢れ、若い人たちの浴衣姿も多い。大村益次郎の像の周りで「世田谷区民謡連盟」による盆踊り。出店の後ろには、一口一万円也の奉納ちょうちんが一〇段の高さに飾られ、奉納者の名前が黒々と。
 「みたままつり」は戦後、一九四七年から始まったようであるが、この様子だけ見ると「東京風物詩その一」といった風情である。


大村益次郎像の周りで盆踊り。

 しかし、靖国神社は普通の神社ではない。「ご神体」は「天皇のために戦った戦死者たち(これを『英霊』と称する)」である。戦死者の遺族たちが、自分の父・夫・子どもたちを神として祀ってもらうことのできたこの神社へ、お参りに来るところである。そして、「戦死」を尊いものと意味づけたい政治家たちができるだけ公然と参拝しようとするところである。
 そうであるからこそ、戦死を肯定的に捉えたくない遺族は靖国神社に足も向けたくないと思っている。「内閣総理大臣」の肩書をつけて参拝を繰り返す小泉純一郎氏に対して、全国六か所で慰謝料や差し止めを求める訴訟が起こされ、福岡以外は未だ係属中である。


おみくじも売っている。

 そんなことはおそらく知らない若い人たちが、神妙に本殿にさい銭を投げてお参りをしている。合格祈願か、恋愛成就か。


ちょうちんには「小泉純一郎」の名も。しかし肩書がない。2002年のまつりでは「内閣総理大臣」と付いていたのに(いのちのことば社・21世紀ブックレット「新遊就館」ものがたり(西川重則著))。

写真と文 大橋さゆり(大阪弁護士会 靖国訴訟団)