
南米チリでは、2019年10月から政府・政治家に対する民衆の異議申し立ての闘いが燃えあがりました。この「社会的爆発」とも呼ばれる闘争はなぜ生まれ、チリ社会は今後どこへ向かおうとしているのか、その背景について読み解いていきたいと思います。
1.「目覚めた、チリは目覚めた!」(出来事の推移)
人々の怒りが爆発した直接のきっかけは、サンティアゴの首都圏交通の地下鉄運賃値上げ(10月6日から実施)でした。地下鉄運賃は時間帯で変化し、ラッシュアワーなどのピーク時に高くなります。今回は最高が800ペソから830ペソへの値上げでした。
翌7日から中等教育の学生たちが、値上げに反対して自動改札を飛び越える無賃乗車デモを始めました。その後、カラビネロスと呼ばれる国家警察軍が駅を警備、学生との衝突が激化して駅施設などが破壊されました。駅は閉鎖され運行にも支障が出ます。
18日、様々な地区で鍋などを叩いて抗議の意思を示す「カセロラソ」や道路でのバリケード封鎖が始まります。地区の若者たちも抗議行動に参加。地下鉄の駅への襲撃(火災も発生)だけでなく、商業施設やスーパーマーケットなどでの略奪行為も起こりました(全国へ拡大)。