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コロナ禍のラテンアメリカ・カリブ地域

 今回は、コロナ禍のラテンアメリカ・カリブ地域の経済状況、取り組むべき課題は何かについて、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(CEPAL)の報告を通じて概観します。

(1)感染拡大が続くラテンアメリカ

 ラテンアメリカ地域では、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、「エピセンター(震源地)」とも言われています。感染者数の多い世界10か国の中に次の5か国が入っています。(米ジョンズ・ホプキンス大学調べ。8月18八日時点)

・ブラジル  累計感染者数(335万9570) 死者数(10万8536)
・ペルー   累計感染者数(53万5946) 死者数(2万6281)
・メキシコ  累計感染者数(52万5733) 死者数(5万7023)
・コロンビア 累計感染者数(47万6660) 死者数(1万5372)
・チリ    累計感染者数(38万7502) 死者数(1万513)

(2)ラテンアメリカの経済状況

 パンデミック(WHOが宣言したのが3月11日)以降、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会が同地域の経済状況についての報告を定期的に公表していますが、ここでは2つの報告を紹介します。

①7月15日付の報告。タイトルは「増大する新型コロナウイルス感染症の影響に立ち向かう。平等な回復のために : 新しい予測」。

②7月30日付の報告。汎米保健機構(WHOのアメリカ地域事務局)との連名によるもの。
タイトルは「医療と経済 : ラテンアメリカ・カリブ地域で新型コロナウイルス感染症に立ち向かい、持続可能な発展への歩みを再開するために必要な一致点」。

 ②の報告では、この地域の現状を次のように特徴づけています。

「この地域は、以下の要因からとくに脆弱である。それは、インフォーマルな労働、都市化、貧困、不平等、医療と社会的保護の壊れやすいシステムである。住民の大部分は、特別な配慮が必要とされる状況の下で生活している。」

「カリブの国々では、比較的早くパンデミックを抑え込むことができているが、ラテンアメリカ地域では、感染レベルが低下することなく続いている。」

 その上で、「パンデミックの感染曲線が抑制されなければ、国々の経済を再活性化することはできない。同時に、パンデミックの抑制にしても、経済の再開にしても、医療、経済、社会政策を統合した国の政策を介した国家のリーダーシップと、効果的で精力的な統率が求められる。」

 まず感染抑制のための措置(必要不可欠以外の活動の停止、隔離、外出自粛など)が経済活動に与える影響についてですが、世界経済全体のGDPが第2次大戦後で最大幅のマイナス5.2%になり、9割の国で1人当たりGDPも低下すると予測。

 ラテンアメリカ・カリブ地域ではマイナス9.1%で1901年に記録し始めてから最大と予測しています。地域の1人当たりGDPもマイナス9.9%に達すると見ています。そうなると2010年と似た水準となり、10年前の水準に後戻りしてしまうとも述べています。

 7月段階では、衛生上の制限措置の段階的解除に伴い、ゆっくりとした回復基調にはあるものの、先行きは依然不透明とも指摘しています。

ラテンアメリカ諸国の2020年GDP予測
(出典:①の報告より抜粋)