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ブラジルの緊急援助とベーシックインカム

(1)ブラジルの緊急援助(社会的脆弱層への現金給付)とは

 ブラジルでは新型コロナウイルス感染症の拡大が依然として続いています。そうした中、4月2日に1つの法律(緊急援助法:法律13982号)が発効しました。
 これは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大を抑えるための社会的隔離措置に伴う経済活動の停滞によって、所得を失うなど最も影響を受けている社会的脆弱層に対して現金給付を行う支援策です。

 この法律が成立・発効するまでの経緯を簡単に見ておきます。
 3月18日、報道された連邦政府の検討案は、非正規労働者への支援として、3か月間、月額200レアルを引き出せるバウチャー(クーポン券)を配布するというものでした。

 これに対して、ベーシックインカム・ブラジル・ネットワークなどを中心に、160を超える団体や運動体が結集して、3月20日から「私たちが望むベーシックインカム」キャンペーンを開始しました。このキャンペーンには、50万を超える市民と、3000人のソーシャルメディアで影響力を持つ人たちの支持が集まりました。キャンペーン団体は政策の提案を国会議員に行い、これを踏まえて法案が作成されました。

 3月25日に野党7党が貧困層の家族のための緊急ベーシックインカム法案を提出。この法案では一世帯あたり最低賃金の2倍(2090レアル)までの額を給付する案が提起されました。議会では、政府が代案として一人あたり最低賃金の半分(522.5レアル)までの給付額を提示し、最終的に600レアルで合意が成立しました。

 3月26日に下院、3月30日に上院で緊急援助法案が可決され、4月1日に大統領が承認して同法が成立しました(4月2日発効)。また、暫定令937号が制定されて財源負担も認められました(国庫負担額は982億レアル)。