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はじめに

 「ラテンアメリカの現在」は、ラテンアメリカ・カリブ海地域での民衆の社会運動を軸に、その背景となる政治・経済的なニュースをピックアップして紹介するページです。

 2000年代以降、この地域では、新自由主義的グローバリゼーションに抗する社会運動の活発化と連動した「左派・進歩派政権」が台頭してきました。しかし2010年代になって次第に、左派政権の政策面での行き詰まりや右派勢力の巻き返しなどが起こり、ラテンアメリカ社会自身がいろいろな意味で分岐してきています。
 とりわけ、米国ではトランプ政権による介入主義的な対応が強まり、各国内でも権威主義的な政治の傾向が顕著になっています。

 こうした情勢の複雑な変化を踏まえつつ、ラテンアメリカ社会が現在から未来にわたってどう変化していこうとしているのかをできるだけ事実を踏まえ、読み解きながら考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

【記事一覧】
エクアドル 大統領選の結果と今後(2021年4月20日)
キューバ 通貨・為替の整備について(2021年3月22日)
エクアドル 大統領選挙の行方(2021年3月7日)
コロンビア くり返される労働組合員・社会活動家への暴力(2021年2月2日)
ベネズエラ マドゥーロ大統領の年次報告(2021年1月20日)
キューバ 来年1月から通貨・為替レートの統合を開始(2020年12月16日)
ペルー 大統領の辞職と政治的危機の構図(2020年12月1日)
チリ 憲法議会選挙をめぐって(2020年11月26日)
ボリビア 新大統領の就任演説(2020年11月18日)
チリ、憲法改正の是非を問う国民投票(2020年10月31日)
ボリビアの総選挙について(2)最終結果の公表(2020年10月25日)
ボリビアの総選挙について、左派勢力の勝利へ(2020年10月23日)
キューバの「二重通貨問題」について(2020年10月15日)
キューバの労働事情(賃金編)(2020年9月29日)
キューバの労働事情(就労編)(2020年9月27日)
コロナ禍のキューバ社会(2020年9月16日)
コロナ禍、債務問題に苦しむアルゼンチン(2020年8月31日)
コロナ禍のラテンアメリカ・カリブ地域(2020年8月18日)
〈危機〉の中のベネズエラ(2020年8月4日)
ベネズエラ、増加する感染者と経済状況(2020年7月27日)
スペインの最低生活所得とベーシックインカム(2020年7月21日)
メキシコ、感染症対策と「新しい日常」、サパティスタの声明(2020年7月6日)
キューバ、感染症対策と経済活動の再開(2020年6月26日)
ペルー、感染拡大から見える社会の矛盾(2020年6月19日)
ブラジルの緊急援助とベーシックインカム(2020年6月12日)
感染拡大が続くブラジル(2020年6月4日)
「コロナ禍」のラテンアメリカ(2020年5月28日)
キューバ、感染症と国際連帯(2020年5月18日)
ボリビアの行方とパンデミック(2020年5月11日)
キューバ、憲法改正から1年(2020年5月4日)
抗議するチリ、そしてパンデミック(2020年4月27日)

(雑誌『アジェンダ』でも「ラテンアメリカの現在―分岐する世界の中で―」というタイトルの連載記事を書いています。)

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キューバ 通貨・為替の整備について

(1)通貨・為替の整備とは

 過去の配信記事(キューバ 来年1月から通貨統合を開始 第26回配信記事)に書きましたように、「通貨・為替の整備」(以下「整備」)と呼ばれる政策転換が始まってからすでに2か月以上が経ちます。

 今回は状況がどのように変化しているのかについて、いくつか特徴的な情報を見ていきたいと思います。大きく分けると、市民生活に関連する部分と企業活動に関連する部分がありますが、今回は主に市民生活への影響というところに絞って見ていくことにします。

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エクアドル 大統領選挙の行方

(1)2月7日に実施された大統領選挙の結果

 2月7日、エクアドルで、正副大統領、国会議員(一院制、137名)、アンデス議会議員(5名)(※)を選ぶ総選挙が実施されました。ここでは大統領選挙についてまとめてみます。

(※)アンデス議会:アンデス共同体(アンデス地域の地域統合体)の機構。各加盟国は5人の議員を普通選挙で選出することになっています。

 今回は16名の候補者が大統領選を戦いました。有権者数は1310万人で、投票率は80.99 %でした。当選条件は、得票率50%以上、もしくは40%以上で次点の候補に10ポイントの差をつけることになっていますが、いずれの候補もこの条件を満たさなかったため、後日上位2名による決選投票が行われます(投票日は4月11日の予定)。

 国家選挙審議会(CNE。中央選管)が、2月19日に報告した最終結果は以下のとおり(ここでは上位3名の結果のみ示しておきます)。とくに2位と3位の得票が僅差であったため、7日に実施されてから最終結果が公表されるまでに12日間も時間がかかりました。

1位:アンドレス・アラウス候補(36歳)、希望のための連合(UNES)、得票率32.72%(303万票)。
2位:ギジェルモ・ラソ(65歳)、機会創出政治運動(CREO)、得票率19.74%(183万票)。
3位:ヤク・ペレス(51歳)、パチャクテク(エクアドル先住民連盟(CONAIE)の政治組織)、得票率19.39%(179万票)。

 この結果により、アンドレス・アラウス候補とギジェルモ・ラソ候補が決戦投票に進出することになりました。

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コロンビア くり返される労働組合員・社会活動家への暴力

(1)くり返される労働組合員・社会活動家に対する殺害事件

 少し前になりますが、昨年11月に公表されたコロンビアについての英BBCの記事を紹介します。『なぜコロンビアに労働組合がほとんど存在しないのか(社会的リーダーの殺害とどう関係しているのか)』(2020年11月25日付記事)というタイトルの記事です。

 記事の冒頭で、昨年11月下旬に起こった社会活動家と労働組合員に対する殺害事件を報じています。以下、他の情報と合わせて再構成しています。

 11月20日頃、ジョニー・ウォルター・カストロさん(40歳)が、コロンビア南部のナリーニョ県リナーレス市にある自宅に侵入してきた男たちの銃撃を受けて殺害されました。ウォルターさんは同地区の紛争の犠牲者の代表として社会活動を行っていました。

 11月22日、同じくナリーニョ県トゥマコ市で、教師で労働組合員であったバイロン・アリリオ・レベロさんの遺体が発見されました。バイロン・アリリオ・レベロさんは誘拐されたのちに殺害され、死体が遺棄されていました。

 記事では「殺害の詳細も具体的な動機も解明されていない。この2名は以前から脅迫を受けていた」とし、共通する要因として、2人が社会的な活動家であったために亡くなったことを指摘しています。

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ベネズエラ マドゥーロ大統領の年次報告

 1月12日(火)、ニコラス・マドゥーロ大統領が新しい国会で年次報告を行いました。その内容に入る前に、ここに至るまでの昨年末からの動きを簡単に振り返ってみます。

(1)昨年末からの主な出来事

(ⅰ)昨年12月6日、国会議員選挙の実施

 国会議員選挙は以下の統一会派によって争われました(投票率は30.5%)。

 政権与党側(チャベス派)では、ベネズエラ社会主義統一党(PSUV)を中心とした統一会派「大祖国機軸」(GPP、9政党)と、ベネズエラ共産党を中心とした会派「革命的人民代替構想」(APR、9政党)が参加しました。

 野党勢力は、選挙に参加するグループとボイコットグループに分かれました。選挙に参加した会派は「民主同盟」(AD、6政党)と、「ベネズエラ団結同盟」(AVU、3政党)の2つでした。

 G4と呼ばれる4つの主要野党である大衆意思党(VP)、正義第一党(PJ)、民主行動(AD)、新時代党(UNT)は、いずれも参加派とボイコット派に分裂しました。選挙結果は、以下のとおりです。ちなみに国会は一院制で定数は277です。

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キューバ 来年1月から通貨・為替レート統合を開始

(1)通貨・為替レートの統合開始の発表

 12月10日、キューバのディアスカネル大統領は、テレビ・ラジオの放送を通じて、来年1月1日から通貨・為替レートの統合を開始することを伝えました(放送には、ラウル・カストロ共産党第1書記が同席)。通貨はキューバペソ(CUP)のみとなり、これまで流通していた「外貨兌換ペソ」(CUC)は廃止となります。為替レートは「1米ドル(USD)=24ペソ(CUP)」に統一されます。このレートは、住民に対しても企業に対しても同じく適用されます。(以前は異なるレートが使われていました)

「対応する必要なすべての法律の作成とチェックが終了したので、1月1日から通貨・為替統合を開始することを通知できる条件が整ったとみなす」とディアスカネル大統領は述べました。

 この統合に伴い、新しい為替レートの設定、外貨兌換ペソ(CUC)の流通中止、過度な補助金や不適切な無償措置の廃止、所得分配における修正などが実施されることになります。