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ボリビア 大統領選・決選投票の結果

10月19日(日曜)、大統領選の決選投票が行われ、8月17日の1回目投票で第1位だった中道派のロドリゴ・パス候補がホルヘ・キロガ候補を破って当選しました。新しく選出された正副大統領は11月8日に就任式を迎えます。

(以下の記事は、BBCの2025年10月20日付配信記事等を参照してまとめました。)

ボリビアの最高選挙裁判所(TSE)の報告(開票速報値)によると、

ロドリゴ・パス候補(キリスト教民主党) 得票数(335万6937票) 得票率(54.6%)
ホルヘ・キロガ候補(自由同盟)     得票数(279万0364票) 得票率(45.4%)

※投票率85%

全国9県のうち、得票率でパス候補が上回ったのが6県(北からコビハ、ラパス、コチャバンバ、オルーロ、スクレ、ポトシ:中部・西部の地域)でした。

この結果報告について、キロガ候補は、「(第1ラウンドと同じく)第2ラウンドでの集計作業を尊重します。ロドリゴ・パス氏を祝福します。心からお祝いを申し上げたい」とコメントし、自らの敗北を認めました。

選挙結果速報システム(SIREPRE)が約1時間停止していたことから、キロガ候補の支持者の一部から、選挙結果について「不正」があったのではないかという疑惑が表明されていましたが、キロガ候補の発言はこれを打ち消すものでした。

「ボリビアで初めて行われた歴史的な第2回目の投票で大統領に選出されたロドリゴ・パス・ペレイラ氏に祝意を表し、その政府の成功を切に願います」と、任期を迎えて退任するルイス・アルセ現大統領はX(旧ツイッター)で述べました。

1回目の投票結果については、このコーナー「ラテンアメリカの現在」の2025年8月29日付配信記事に書きましたが、今回の選挙の大きな争点の1つは、高止まりするインフレとマクロ経済の停滞をどう打開するかという点にあります。

この点について言うと、敗れたキロガ候補の考えは、「今のボリビアは破産している」と評価した上で、公共支出の大幅削減、燃料へのユニバーサルな補助金の削減(公共交通と社会的脆弱層に対象を絞る)、赤字国営企業の閉鎖または民営化、省庁の廃止などによる「抜本的な改革」の必要性を訴えていました。典型的な新自由主義的改革路線です。

それに対して、勝利したパス候補は「すべての人のための資本主義」をスローガンに掲げ、貧困層向けの社会保障制度を維持しながら民間部門の成長を促進するなど、より段階的なアプローチを取ろうとしています。そのポイントの1つは、ボリビア経済の多くを担っているインフォーマル部門で働く人々、とくに自営業者への対策と見られています。とは言え、燃料補助金の削減や公共支出の広範な削減(支出の合理化と中央と地方の財政配分の調整)という面ではキロガ候補と共通しています。

隣国アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が実施してきたようなドラスティックな緊縮財政措置の導入を心配する向きもありましたが、パス候補はこれについては否定しています。

今回のパス氏の勝利は、1回目の投票で与党「社会主義運動」(MAS)に投票した都市部と農村部の票(主に下層階級)をうまく獲得することができたからと見られています。その上で、「支持」を引きつけたのが副大統領候補のエドマン・ララ氏の存在です。ララ氏は元警察官で、ソーシャルメディアで汚職スキャンダルを告発することで有名な「大衆受け」する人物です。こうした経歴が若者や労働者階級の有権者からの支持につながったと言われています。

「祖国を愛するすべての人たちと一緒に統治するために我々は手を広げている」とパス氏は、勝利した後の最初の演説で訴えました。そして約20年間続いた左派の「社会主義運動」(MAS)政権を批判する形で、「イデオロギーは我々を食べさせてくれない。我々を食べさせてくれるのは、労働の権利、法に基づく保障、私有財産の尊重、そして将来への確実性である」と述べました。

パス氏の政治信条は、基本的に中道右派の大統領(1989~1993年)であった、自身の父親であるハイメ・パス・サモラ氏を受け継いでいると言われています。

左派政権から中道派への政権交代が確実となった中で、経済面、外交面では米国との関係がポイントとなっています。マルコ・ルビオ米国務長官は、選挙結果を受けて、「米国は、ロドリゴ・パス氏がボリビアの次期大統領に選出されたことを祝福する。同じく、ボリビアにとって歴史的な瞬間にあるボリビア国民を祝福する」と述べました。

その上で、「米国は、不法移民の根絶、 二国間投資の市場アクセスの改善、地域の安全保障強化のための国際犯罪組織との闘いなど、共通の優先事項についてボリビアと協力する用意がある」と主張し、ボリビアとの関係を改善する意向を明らかにしています。

9月下旬、パス氏は燃料供給を確保するために米国との15億ドルの経済協力協定を結ぶ計画を発表するなど、米国からの経済的支援に期待を寄せています。そこにはアルゼンチンと同じく、南米大陸への影響を強めるための足場を確保したい米国側の思惑も透けて見えます。

大統領選に勝利したとは言え、8月に行われた総選挙の結果を受けた国会(上下院)の議席構成を見ると、パス氏の所属するキリスト教民主党は両院とも単独過半数に届いていません(上院では16議席、総数36。下院では49議席、総数130)。

議会運営においては、敗れたキロガ氏の自由同盟との連携が欠かせないことになります(自由同盟は、上院では12議席、下院では39議席)。どこまで政策上の独自性を打ち出せるか、また政策をどこまで実行できるかについては今後の話し合いによると見られています。

主要な労働組合であるボリビア労働総連(COB)は、同組合がこれまで達成してきた社会的、経済的成果に対するいかなる脅威にも反対すると警告した上で、新政権に対して、街頭での抗議行動の影響を回避するための政治的手腕が必要となるだろうと強調しています。

2025年10月26日 西尾幸治(アジェンダ編集員)
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