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キューバ 圧力を強めるトランプ政権と緊急対策の実施

2月6日(金)、キューバ政府は、必要不可欠なサービスの継続を保証するための全般的な緊急措置(エネルギー、交通、教育、医療、労働など)を講じると発表しました。これは、米国のトランプ政権が今年に入ってからさらに強めている圧力に対処するものです。

(1)トランプ政権による圧力強化

トランプ大統領による圧力の強化は、まず1月3日に実行されたベネズエラへの軍事侵攻とそれによるキューバへの原油供給の停止でした。トランプ大統領は1月11日に「キューバには石油も資金も一切供給しない。ゼロだ」「キューバには手遅れになる前に取引を強く勧める」と自身のSNSに投稿しました。

さらに1月29日には、キューバに石油を供給する国からの輸入品に追加関税を課すための大統領令に署名しました。この時、米国政府は、キューバが米国の国家安全保障と外交政策にとって「異例かつ並外れた」脅威であると一方的に決めつけています。

この措置により、ベネズエラとともに原油供給を行っていたメキシコがキューバ向けの原油供給を停止したことを明らかにしました(2月3日)。メキシコ政府は代わりに食料などの生活物資の援助を行うとしました。

その後、12日にメキシコ海軍の船2隻が、食料や個人衛生用品など約800トンの物資を積んでハバナに到着しました。数日中にさらに1500トンの粉ミルクと豆類を送る予定となっています。

こうした圧力強化に対して、キューバのディアス=カネル大統領が、2月5日、現在の困難な状況と今後に関しての質問に答える記者会見を行いました(全国で生中継)。

その中で、トランプ大統領の措置をキューバに対する「最大限の圧力」政策であると指摘、米国政府の言う「キューバ崩壊論」を批判しつつも、「米国と対話する用意がある」と述べました。また「深刻な燃料不足に対処する」計画を政府が準備していることも明らかにしました。

トランプ政権によるキューバへの圧力強化に対する国外からの批判についてですが、例えば、チリのボリッチ大統領が次のようなコメントを発表しています。

「米国がキューバに対して課し、ここ数週間で強化してきた封鎖は犯罪であり、国民全体の人権に対する侵害である。キューバとの間に意見の相違があることは承知の上だが、罪のない子どもたちや市民に危害を加えることを正当化するものは何もない」(2月12日、自らのXに投稿)。

チリ政府は、ユニセフを通じてキューバに100万ドルの人道支援を行うと発表しました(2月13日)。但しボリッチ大統領自身は、トランプ政権の圧力(米国による長年の経済封鎖)に対してだけ批判したのではなく、キューバの体制についても「独裁政治」(「一党制であり、表現の自由がない」)であるとして批判的な考えを明らかにしています。

(2)キューバ政府の緊急措置

キューバのディアス=カネル大統領が会見を行った翌日(2月6日)に、政府から全般的な緊急措置が講じられることについての発表がありました(措置の実施は翌週から)。

この措置については、6日に行われた閣僚評議会で承認されたのち、テレビなどの各種メディアを通じて内容が説明されました。その中で、ペレス=オリバ・フラガ第一副首相兼外国貿易・外国投資大臣は、今回の措置の目的は「国民のための基本的サービスを守り、確保すること」にあると強調しました。

実施される具体的な措置としては、燃料販売の制限(配給制)、県間の長距離バスと鉄道の運行削減、ホテルの一部閉鎖、公共部門(公共機関や国営企業)の週4日勤務(月曜日から木曜日)への短縮、テレワークの実施などが含まれています。

空の分野では、当面2月10日から3月11日までの間、ホセ・マルティ空港(ハバナ)を含むキューバ国内9つの国際空港すべてにおいて商業便への燃料供給が一時停止されるとしています。運行する場合は往復分の燃料をあらかじめ積んでおくか、別の場所で給油する必要があります。

キューバへの観光客の主な2つの供給先であるカナダとロシアの航空会社は、それまでにキューバに足止めされている自国民を出国させた後は、ハバナ行きのフライトを一時的に停止する措置をとることを決めました。

また、キューバにおけるスペインのホテルチェーンであるメリア社は、キューバにあるホテル30軒のうち3軒を閉鎖し、設備が充実して稼働率の高いホテルに観光客を集中させることを発表しました。

これらにより、今後の観光客の激減が予想されており、国の主な外貨収入源である観光業にとって大きな痛手となります。

エネルギーの分野では、太陽光など再生可能エネルギーへの投資を継続し、エネルギーの生産量を増やすとしています。

教育分野では、授業時間の短縮、大学ではハイブリッド学習(オンラインと対面の併用)が実施されます。

医療分野では、病院は原則として緊急手術のみの対応となり、職員の削減、医療機関に近い住民への対応を優先する(移動と燃料節約のため)など、大きな影響が出ています。

19日(木)には、ミランダ保健相が、手術を延期せざるを得なくなっている状況について報告しています。キューバ保健省は、緊急および急患の治療の場合の救急車搬送が限られていると報じています。

ペレス=オリバ・フラガ副首相は説明の中で、「既存の燃料供給は、国民のための必要不可欠なサービスの保護と、不可欠な経済活動に充てられている」と述べています。

キューバ革命以降、60年以上にわたり米国政府による経済封鎖下にあるキューバは、1991年のソ連崩壊時以来の深刻な経済危機に陥っていると言われています。海外の報道を見ると、深刻な燃料不足とエネルギー危機の中で家庭では炭と薪を使って調理している状況にあることなどが報じられています。

「我々は困難な時代を生き抜くことになるとわかっている」と、ディアス=カネル大統領は、2月5日に行われた記者会見の中で述べました。

(3)その後の動き

2月20日、米国の連邦最高裁判所が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて大統領が関税を課すことはできないとの判決を下しました。この違憲判決を受けてトランプ大統領は、IEEPAに基づいた関税の徴収を終了する大統領令に署名しました(2月24日より停止)。

これにより、キューバに石油を供給する国からの輸入品に追加関税を課すとした1月29日の大統領令は事実上無効となりました。

しかしトランプ政権が、キューバを「異例かつ並外れた」脅威であると一方的に決めつけた「国家非常事態」宣言は撤回されていないため、新たな措置の可能性が残っているとの報道もあります。

さらに2月25日、米国財務省は、ベネズエラ産原油と派生品のキューバへの販売について一定の条件付きながらこれを認める決定を行いました。今回の措置は、キューバ政府に関係しない、同島での商業的および人道的使用のための輸出を含む「キューバ国民を支援する」取引を許可するものとしています。

キューバに販売するにはライセンスの申請と承認が必要です(認められれば、制裁の対象外となる)。その条件として、売却代金を米国政府が管理する口座に入金するなど、販売・取引に課せられたいくつかの制限を遵守する必要があります。申請する企業は米国以外の企業も可能としています。

一部緩和されたとは言え、あくまでも米国主導の措置であり、それに従わなければならないことには変わりがありません。今まで以上に国際社会が強く働きかけ、トランプ政権の圧力強化を一刻も早くやめさせる必要があります。今後とも事態を注視していきたいと思います。

2026年2月27日 西尾幸治(アジェンダ編集員)
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