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ペルー、感染拡大から見える社会の矛盾

(1)はじめに

 ペルーで新型コロナウイルス感染者が初めて公式に確認されたのは、3月6日でした。ペルー政府の対応については以下のとおりです。

3月11日、公衆衛生緊急事態を宣言。
3月15日、国家緊急事態を宣言。
この2つの宣言の性格は異なっています。

①国家緊急事態について
 最初に発令された期間は3月15日~3月30日の15日間でしたが、今のところ6月30日まで続く予定です。
 5回延長されています。1度目の延長(3月31日~4月12日)、2度目の延長(4月13日~26日)、3度目の延長(4月27日~5月10日)、4度目の延長(5月11日~24日)、5度目の延長(5月25日~6月30日まで)。

 この宣言は憲法第137条1項に基づいています。同条は「平和や国内秩序の混乱、大惨事、または国民生活に影響を及ぼす深刻な状況の場合」に緊急事態を認めています。その場合「個人の自由と安全に関する憲法上の権利の行使、住居の不可侵性、および領土内での集会と移動の自由を制限または停止することができる」と規定しています。期間は最高政令(Decreto Supremo)によって決められます。

 この発令によって採られている主な措置は、
・陸海空の国境封鎖(3月16日23時59分から)、貨物・物資輸送を除く国内移動の禁止。
・外出規制:外出は生活に必要な物品とサービスの購入など(医療・医薬品、食料品、燃料、金融など)に
 限定される。不要不急の外出は禁止。違反した場合は逮捕・拘禁、罰金など刑事罰の対象になる。
 ※外出時のマスク着用義務化(4月2日から)。日曜日は終日外出禁止(5月3日から)。

・全土での夜間外出禁止(3月18日から。当初は夜8時~翌5時まで)。緊急時は除く。
 (のちに時間帯は変化。現在は午後9時から午前4時まで。一部例外あり)。
・パレードや集会・イベントなどは禁止。
・レジャー・文化施設は営業禁止。
・軍と警察が規制などの対応にあたる。

 また、以下の措置も採られています。
・スーパーマーケット、食品市場、金融機関での顧客対応:受け入れ人数は収容人数の50%以内。入場前の消
 毒、マスクの着用(市場・スーパーでは手袋も)、ソーシャル・ディスタンスの厳守(金融機関では1メー
 トル以上、市場・スーパーでは2メートル以上)(5月11日から)。
・14歳以下の子供について:同居する保護者同伴の下、自宅から500メートル圏内で、2メートル以上のソーシ
 ャル・ディスタンスを保って1日30分以内の散歩ができる(5月18日から)。
 これと並行して、5月以降、4段階に分けて部分的に経済活動を再開する予定になっています。

②公衆衛生緊急事態について
・最高政令第008-2020-SA号:90日間の公衆衛生緊急事態宣言を全土に発令。期間は3月11日~6月8日まで。
 6月初めに9月7日まで延長することを発表。
・立法政令1156号:住民の健康と命への危険の高まり、または被害が存在する場合、公衆衛生の公共サービス
 を保障するための措置を定める。
 新型コロナウイルス対策用の防護装備や物資の購入、人的契約に関することや行動計画の承認と実施が主な内容になっています。

 以上のような措置に関して、イプソス社が行った世論調査(5月)では、80%の人がマルティン・ビスカラ大統領の運営を支持する結果を示しています。(5月14、15日に都市部で実施。18歳以上1020名が回答)
 続いて、ペルーの感染状況について見ておきます。

 厳しい制限措置が始まってから3か月が経過する中、ペルーはラテンアメリカ諸国の中でブラジルに次いで感染者が多く確認されています。ペルーの場合は、ブラジルと違ってかなり厳しい隔離・制限措置が採られているにも関わらず、感染者数がなぜ増加しているのか、その要因について考えてみる必要があります。