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キューバの「二重通貨問題」について

はじめに

 前2回にわたってキューバの労働事情(就労編と賃金編)について述べてきましたが、今回は「二重通貨・為替問題」について述べてみたいと思います。

 日本に住んでいる私たちにとってはなかなか理解しがたいところがありますが、キューバでは2つの通貨、為替レートが日常的に使われています。とくに一般の人々に適用される為替レートと企業に適用される為替レートが異なっていることによって、価格をベースにした様々な経済指標がその実勢を正しく反映していないという問題が生じています。

 自らが提供する労働を通じて貨幣収入を得ている人々にとって、名目賃金の実質的な価値が正当に評価されているのかが不確かであるという事態は、それだけにとどまらず、稼いでいる賃金だけでは十分な生活を送ることができないという問題の一端ともなっています。

 そのため、キューバ政府は、できるだけ速やかに通貨と為替レートの一本化を実現することを考えてきましたが、現在に至るまでその実施に踏み切ってはいません。というのも、この措置が、国内経済や人々の生活に多大な影響を与えると言われてきたからです。一体、どのような影響があるのか、その背景を考えてみます。

 ちなみに、キューバに旅行する場合、外国の観光客はキューバ国内で使用する通貨として外貨兌換ペソ(CUC)を両替して入手する必要があります(その際、手数料も差し引かれます)。通常はキューバ市民が使っている国内ペソ(CUP)に出会う機会はありません。