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感染拡大が続くブラジル

 (1)ブラジルの感染状況

 5月26日、世界保健機関(WHO)は、米州が新型コロナウイルス感染症の新たな震源地になっているとの見解を示し、とりわけラテンアメリカ諸国での急激な感染拡大を警戒しています。

 同日、汎米保健機構(PAHO:WHOの米州地域事務局)のエティエンヌ事務局長は、「先週ブラジルで報告された新規感染者数がこの7日間で最も高かったことを特に心配している。ペルーとチリでも高い発症率が報告されている」と述べ、「今は制限を緩和したり、予防戦略を縮小したりする時ではない。」と指摘しています。

 とくにブラジルでは感染者・死者ともに急増し、累積感染者数では米国に次いで世界で2番目に多い国となっています(公式に感染者が確認されたのが2月26日)。

累計感染者数:58万4016人
死者数:3万2548人
致死率:5・57%

主な州では、
①サンパウロ州(ブラジル国内で最多)
累積感染者数:12万3483人
死者数:8276人
②リオデジャネイロ州
累積感染者:5万9240人
死者数:6010人
(米ジョンズ・ホプキンス大学調べ。6月4日)

 この2州の累積感染者数の合計は国全体の感染者数の31%超を占めています。なかでもサンパウロ州は群を抜いて多くなっています。

 こうした状況下で懸念されるのが「医療崩壊」です。ブラジル最大の都市であるサンパウロ市(人口約1200万人)のブルーノ・コヴァス市長は、同市の公立病院の病床利用率が90%であると公表しています。国内の専門家も、感染スピードが増していくにつれて、医療システムが非常に厳しい状況になることを心配しており、解決策として人の移動を強制的な隔離も含めてより厳しく制限することが必要であると述べています。

 ここに至るまで、連邦政府、州・都市では感染防止に対してどのような措置が採られてきたのかを少し振り返ってみたいと思います。