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スペインの最低生活所得とベーシックインカム

 今回はラテンアメリカから離れてスペインの最低生活所得について取り上げたいと思います。ですので「番外編」という形になりますが、以前(7回目配信記事)でブラジルの緊急援助(社会的脆弱層への現金給付)について紹介しましたので、それとのつながりでこのテーマを取り上げることにしました。

(1)スペインの最低生活所得とは

 最低生活所得(Ingreso Minimo Vital, IMV)に関する法律は、5月29日に政令として閣議で承認されました。政令というのは、スペイン憲法第86条の規定によると、緊急時に政府が法律と同等の法的拘束力を持つものとして制定できるとしているものです。条文では30日以内に国会で検討されることになっています。

 政令自体は6月1日に官報に掲載されましたが、国会では審議ののち、6月10日に承認されました(賛成297、反対0、棄権59)。

 財政負担によって将来世代や年金受給者の未来を危うくするとして、IMVに最も批判的であった極右派のVOX(ボックス)も、「わが同胞が必要としている」として最終的には棄権に回りました。

 そもそも、最低生活所得という政策は、社会保障政策の一環として、2019年12月にスペイン社会労働党とポデモス連合が連立政権を作るために締結した政策プログラムの中に含まれていたものです。それが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって導入が早められたことになります。