尖閣諸島(釣魚島)問題はどう論じられてきたか

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倪志敏『尖閣諸島(釣魚島)問題はどう論じられてきたか』(2016年8月1日発行)

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説明

はじめに
 本書は、季刊『アジェンダ 未来への課題』の第50号(二〇一五年秋号)から第53号(二〇一六年夏号)にかけて掲載された、中国人研究者の倪志敏(にい じみん)氏の日中関係、とりわけ尖閣諸島(中国名 釣魚島)の領有権をめぐる問題に焦点をあてた四本の論文をまとめたものです。日中国交正常化交渉や日中平和友好条約交渉の過程において、どのようなやりとりが政府間で行われていたのか、お読みいただければわかるように様々な資料にもとづいて詳細に検証されています。こうした事実を一人でも多くの人に知ってほしい、その思いからこのブックレットを発行しました。
 日中国交正常化から四〇年余りが経過し、その間に東アジア情勢も大きく変貌しました。その最大の変化こそ、中国の台頭といっても過言ではありません。そうした中、尖閣諸島の領有権をめぐっては、とりわけ「棚上げ合意」を反故にした二〇一二年の日本政府による「国有化」以降、日中間の対立は一段とエスカレートしています。
 「尖閣諸島に関して領土問題は存在しない」と主張する日本政府は、交渉するどころか、海上保安庁に尖閣専門部隊を新設するなど監視・警備体制を強化し、さらに中国を公然と「仮想敵国」扱いして「南西方面重視」の軍事戦略にシフトしています。一方、国力の増大に伴って軍事力の増強を続けている中国政府もまた、日本側の対応に抗議して尖閣周辺海域への監視船や軍艦等の派遣を恒常的に行っています。互いに「一歩も引けない」緊迫した状況にあり、まさに一触即発、不測の事態の勃発が懸念されます。
 領土問題がクローズアップされることで、ナショナリズムが日中双方の国内で煽られ、互いに軍事力の増強に走り、問題がますます大きなものになっています。しかし、当然のことですが、現在の日中関係において尖閣諸島問題がすべてではありません。そして、世界各地のさまざまな事例に見るように、領土問題を平和的に解決することは、たとえ困難ではあるとしても、強固な政治的意思さえあれば不可能ではないはずです。
 「中国脅威論」をテコにした自衛隊の軍隊化が進められ、九条改憲が現実味を帯びる今こそ、「軍事に頼らない安全保障」と平和創造のあり方を考える一助に、本書がなれば幸いです。
アジェンダ・プロジェクト編集部
(本書より引用)

『尖閣諸島(釣魚島)問題はどう論じられてきたか』目次

中日国交正常化四三周年に際して 信は万事の元となす -中日国交正常化交渉に関する再考察-
はじめに
Ⅰ 国交正常化交渉のポイント
Ⅱ 「ご迷惑」発言と中国側の対応
Ⅲ 姫鵬飛・大平「車中会談」による事態の打開
Ⅳ 釣魚島(尖閣諸島)「棚上げ合意」の成立
Ⅴ 国交正常化成る
結びに代えて

先人の知恵を蘇らせよう -「中日平和友好条約」交渉と釣魚島(尖閣諸島)「棚上げ合意」再確認のプロセス-
はじめに
Ⅰ 釣魚島「棚上げ合意」の成立
Ⅱ 「中日平和友好条約」交渉と釣魚島問題
Ⅲ 中日両国による「棚上げ合意」の確認
Ⅳ 鄧小平の記者会見における談話と日本外務省の評価
Ⅴ 「『棚上げ合意』は日本の国益にかなう」とする園田外相の国会答弁
Ⅵ 「棚上げ合意」は日本のメディアの共通認識
Ⅶ 釣魚島周辺海域における石油資源共同開発の動き
結びに代えて

釣魚島(尖閣諸島)問題の争点化から「棚上げ合意」形成までの経緯に関する考察
はじめに
Ⅰ 沖縄返還と釣魚島領有権問題
Ⅱ 中日国交正常化交渉と釣魚島「棚上げ合意」の成立
結びに代えて

釣魚島(尖閣諸島)はいかにして日本領に編入されたのか -明治期の公文書が示すその領有過程-
はじめに
Ⅰ 内務省による釣魚島外二島の調査命令
Ⅱ 現地調査はたった一度、一島、計六時間
Ⅲ 日本政府、国標設置を見合わせる
Ⅳ 甲午戦争で日本圧勝、黄尾嶼、釣魚島二島を密かに編入
結びに代えて
あとがき

【表紙の図】「琉球三十六島之図」
『南島記事外編・乾』に収録(国立国会図書館蔵)。本文57~58ページに解説。

追加情報

書籍の種類

単行本

特集トピック

尖閣諸島(釣魚島)